A Life Less Ordinary

Webエンジニアのポエム

UX Fukuoka vol.7

前回ブログの続き
今回のテーマは
 「受付時のお金や配布物受け渡しの最適化」
です。

会場は北九州で、MIKAGE1881というスモールオフィス・コワーキングスペースをお借りして開催しました。
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WS開始


この日は18名の皆様にご参加いただきました。うち学生さんが1/3を占め、関心の高さをうかがえました。
一通りの流れを説明し、3チームに分かれてまずは行動観察からスタートです。
うちの班は、学生さん3名に受付のやりとりを演じていただきました。
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今回も多くの方にご参加いただきました


受付ロールプレイング


予め決めておいた受け付けの台本は以下の通りです。
1、何からのイベントにやってきたという設定
2、被験者は受付に招待状を渡す
3、受付は招待状を受け取り、名前を聞く
4、被験者は名前を告げる
5、受付は一覧表から名前を探す(10秒待つ)
6、受付は名前を見つける
7、受付は会費3,800円を請求する
8、被験者は五千円札を渡す
9、被験者は受け取り、おつりとしてまず、千円札を渡す。次に小銭と領収書を同時に渡す
10、続けて、被験者に名札と大きさの違う3種類の配布物を矢継ぎ早に渡す

もちろん、なるべく自然に近くするため台本の内容は被験者には伝えず行いました。
それでもやはり、演者はどこかぎこちなかったですw
ロールプレイングの模様は2台のスマホで撮影しました。


映像をもとに振り返り


撮影した映像をもとに、行動の振り返りと確認です。
・受付を待っている間、なぜ受付名簿を覗き込んでいたのか
・五千円札を渡すときなぜ「すみませんが」と言うのか
・小銭と領収書を同時に渡された時にどう思ったか
など、行動に現れていたことから、内面の心理に関することまで根掘り葉掘りの確認です。
これを3セット繰り返しました。


行動の要素化


3人分の行動結果が出ました。これらを分かりやすく整理するために、行動内容の要素化を行いました。
付箋紙一枚に対し、一つの要素を書き出していきます。
複雑な行動内容も分解することで、問題点が浮き彫りになってきます。
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問題点と改善点の抽出


要素化した内容を基に、問題点や改善点を考えていきます。

しかし、この作業が難しかった。
今回の受付は、あえて背景や状況設定をしていなかったので、何をもって問題とするのかが曖昧になりました。
例えば、
 10秒待たされた
という内容も、人によっては早いし遅い。
要素に対しての判断基準がなかったのです。
まずは、その設定から行う必要がありました。ストーリーやペルソナを決めていないので、「仮定のうえの仮定」という状況になりそうな気配でした。


主観的に抽出


判断基準がない以上、自分たちの主観で問題点と改善点を決めていきました。
・10秒待たされること
・小銭と領収書は一緒に渡すこと
・配布物が多い
などの問題が挙げられました。
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改善ストーリーの決定


問題点が出たあとは、いよいよ改善に向けての考察です。
改善にあたってストーリーを考えました。今回は学生さんが多かったのもあって、
「色々な年齢層が参加する大規模な同窓会」
というイベントと設定しました。
そして、ペルソナの設定です。
「御影令夏さん 20歳 令嬢系女子学生 久しぶりの同窓会で楽しみにしていた」
というなるべく具体的なペルソナを設定しました。

そして、どの問題点を改善するかですが、演じた3人が共通して不快感をもった
・受付が長過ぎる
にフォーカスを当て、「待たせることのデザイン」について改善案を考えることにしました。



ストーリーの有無で改善案の内容に差が出る


もし単に受付が長過ぎるという問題を解決しようとするなら、

受付が長い → 少しでも短くする → 効率化を考える → 自動受付システムのようなプログラムを作る

という改善に向かうかもしれません。プログラマーの方なら特にそうかも。

ところが、ストーリーが決まっている分、発想も柔軟になりました。

受付が長い → 受付を長いと感じさせないようにする → 受付時に気がまぎれる何かを与える

という考えに至り、そこからストーリーを勘案し、

受付を"恩師"にしてもらう → 被験者は恩師に久しぶりに会え感動する → その間に受付を済ませ、待っているという感情を抱かせない。また、受付のテーブルに出席者一覧リストを配置しておきそれを読む事で、いっそう待っている感を失わせる

という改善案を考えました。



発表は迫真の演技で


全ての班が考えまとまったところでいよいよ発表です。
発表の方法は特に決めてませんでしたが、いかに分かりやすく使えるかが重要です。
イラストを使ってストーリの説明をする方法もありますが、うちの班は、一番イメージ抱かせやすいと思い、「演技」による発表を行う事にしました。
いわいる「アクティングアウト」ですね。

発表者と演者は学生さん3人。
一人が発表と全体説明を行い、二人が演技です。
女子の方が「御影令夏」さんとなって受付にやってきて、恩師役の男子の方が受付を行います。
おおよその台本は考えましたが、あとのアドリブはおまかせでした。

そしてこれがとてもいい演技!
わざとらしくなく、見事に「令嬢」と「恩師」を演じてました。
見ている人にも、よーーく伝わったのではないでしょうか。
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課題の残るWS


講師のいない、自分たちだけのWSでしたが、課題も多く残りました。

★行動観察自体が「演技」だったため、「本物」のユーザー行動や心理を汲み取れない
 1人目は台本を知らないので自然に近い動きになったかもしれませんが、2人目3人目は台本がわかってしまったので、普段とは違う行動になったかもしれません。
実はうちの班の3人目の演技の際、領収書を渡さなかったので演技を止めて最初から行いましたが、そういうハプニングはユーザーの「素」を発生させやすいので、そのまま演技を続ければよかったです。

★基準がない
記事の途中にも書きましたが、今回の受付には明確な背景やストーリーを儲けませんでした。
これは、こちらからガチガチにテーマを与えるのではなく、ある程度の自由を持たせた形で与えたかったためです。
それが逆に悩むポイントを増やしてしまったかもしれません。

★テーマに合った手法を用いてない
前回講師を務めていただいた浅野先生から
「コピーは学びの質がよくない」
ということを伺ってましたが、まさにそうだと実感しました。
なるべく今回のテーマに沿った手法を取り入れようと画策しましたが、やはり一度やったことがある手法が知見もあるためそれを採択した部分もあります。
それが今回のテーマに即していたかと思うと疑問符です。
調査に映像録画を用いたのはよかったと思います。あとは、評価手法についてもっと相応しいものを取り入れた方がよかったと思います。




さいごに


課題の多いWSでしたが、「モノよりコトから製品をつくることでよいUXが生まれる」ということを実感した会でした。
また次回以降、いろいろな手法を試して行きたいと思います。

今回のWSでは、浅野先生にアドバイス賜りましてありがとうございました。