A Life Less Ordinary

Webエンジニアのポエム

OSC2013 勉強会x勉強会

OSC2013 Fukuokaにて、勉強会x勉強会というセッションでLTしてきました。
その内容と、補足を書きたいと思います。


当然、UX Fukuoka枠で参加したんですが、勉強会の宣伝というよりも主催者視点の思いをそのまま発表した感じです。
なので

「勉強会を主催して よかったこと そうでもなかったこと」

という、率直なタイトルにしてみました。


伝えたかったこと

伝えたかったこととしては、
1, 福岡は勉強会の文化が栄えているので、立ち上げることにはハードルを感じない
2, 勉強会をすれば、人は集まってくれる
3, 「運営」という、本来の「勉強したい」という本筋から離れた課題が出てくる
4, 参加に躊躇している人は、案ずることはないのでたくさん参加してください


大きいポイントとしては、やはり3番目の運営ですね。
主催をしている人なら誰でも通る道でしょうが、純粋な勉強+αの「α」の部分が結構響いたりします。
その分、色んな方と交流できるので一長一短だったりするんでしょうけど。
ただ、私が恵まれているのは、運営を複数人で行っていることですね。もし一人だったらと考えるとなかなか厳しいものがあります。


UXFの立ち位置

しかしながら、福岡には本当に色々な勉強会があります。
そして、そのスタイルも様々です。

例えば、Fukuoka.phpやFukuoka.pmは、心からその言語が好きな人が集まって楽しくやっている印象ですし、
サト研は人の成長を手助けするというコンセプトがあって素晴らしい。

翻ってUX Fukuokaは、今のところ特に確立したスタイルもなく、UXに関する勉強をあらゆる方面から行っている感じです。
端からみて、この会はどう見られているのか気になるところではあります。

しかし、まだ1年とそこそこですしね。確立する段階にまだ来てないのでしょう。
今年はまだ大きなイベントも残ってますので、それを成功させたいですね。

「UX Fukuoka」が発足して1年経っていた

1年前、いちシステムエンジニアの私が、「いかに使ってもらえるサービスを作るか」を勉強したくて「UX」の勉強会を開いてみました。

自分が作ったシステムは、利用者に貢献したか?

今まで、プログラミング技術を通じてサービスや製品を提供してきたけど、果たして気持ちよく使われているのか?何か使っていて不満なことはないのか?実は使っているけど潜在的にやりにくい箇所はないか? など、悶々とすることがありました。
元来、Webデザインには興味があって、魅力的なUIやレイアウト、洗練されたパーツは、自分では作れないながらもそれなりにこだわりがありました。
人を惹き付けるサービスや製品を作りだすために、右も左もわからぬままUXの勉強会を発足してみた、という経緯です。

それから、本当に「いつの間にか」1年が経っていました。せっかくの節目なので、得た事を自分なりにこのブログに綴っていこうと思います。



HCDのこと

UXを勉強していく上では、必ず「HCD=人間中心設計」というワードを目にすると思いますが、それすらも当時は知りませんでした。

2012年9月に行ったvol.2では、いきなり専門家の方が講師を務めていただきました。情報デザインが専門の浅野先生は東京在住ですが、たまたま福岡で学会があり、当勉強会を探して自ら講義のオファーを申し出ていただきました。
その内容は、UXのイロハのイのようなもので、漠然と捉えていたUXの突破口を教えていただいたように思います。そこでHCDの存在を知り、本を買ったり仕事に取り入れてみるといったことを試していくことになります。

その試してみたことの一つに、自分たちだけで行動観察法を行ってみました。
→「福岡UX勉強会(仮)vol.4 行動観察ワークショップ」
 http://allo.hatenablog.jp/entry/2012/11/20/020908

ユーザーのニーズを探るための手法の一つ。手探りの状態だったので初めはどうなることか不安でしたが、北九州市立大学の山崎先生のご協力のもと、一定の成果が出た会になりました。
"楽しめていない人を観察し、どうしたら楽しめるか"
というテーマでユーザーの行動を観察した後に推察を行い議論をしました。最終的には、運営委員会の人に提案できそうな内容に仕上がったと思います。


vol.4を経て、本格的なワークショップを行ったのがvol.5。
→「UX Fukuoka vol.5 オブザベーションワークショップ」
 http://allo.hatenablog.jp/entry/2012/12/27/201324

浅野先生に本格的なセミナーを開いていただき、行動観察をもとに新しく製品のパッケージデザインを行うというものです。
ユーザーの心理や目的に沿うといった
「コトのデザイン」
を体験することができました。
また、以前に自分たちで行った時とは違い、行動観察や問題点の抽出などは先生に一つ一つアドバイスを貰いながら行ったので、より良い成果が出たと思います。

また、vol.5で学んだことをもとに、自分たちだけでワークショップを行ったこともありました。
→「UX Fukuoka vol.7」
 http://allo.hatenablog.jp/entry/2013/02/22/013055

「受付の最適化」というタイトルで、結婚式、セミナー、同窓会など、「受付」というタッチポイントが発生するイベントにおいて、気持ちのよい受付の方法を考えるワークショップを行いました。
「受付」で発生する問題点を抽出し、改善点を発表。皆さん、とても真剣に取り組んでいただきました。

「セミナーのコピー」というのは勉強の質は上がらない、と浅野先生に助言を受けていたのですが、
確かに、課題も多くあったセミナーとなりました。


vol.9では、三たび浅野先生にご登壇いただき、vol.5とは別の行動観察を行いました。
→「UX Fukuoka vol.9 まとめ」
 http://allo.hatenablog.jp/entry/2013/05/15/024554

vol.5が製品のデザインとするなら、vol.9はサービスのデザイン。
前回よりも行動観察の時間を多く費やしました。そこまで時間を使わないと本質が見えてこないし、むしろ、それでも時間が足りないのかもしれないです。
観察というのは、どうしても見られている意識があるので、普段とは異なる言動をしてしまう可能性があります。そこを崩すには素が現れるのを待つか予期せぬハプニングを期待するかですが、いずれにしろ、ある程度の時間は必要になります。


まだ半分

ここまで、半分近くはHCDで提唱されている手法をやってみたことになります。
しかし、4つのサイクル「観察・理解・設計・評価」のうち、まだ前半部分しかやっていません。
しかも前半だって「マスターした」とは程遠い。
いろいろと道のりは長い。。。

UX Fukuoka vol.10 「いつデザインは社会的責任を緩めましたか?」

UX Fukuokaもついに10回目を迎えました。
あまり実感ないですが、多くの人に支えられすぎている結果だからこそと思っています。
ありがとうございます。


10回目のテーマは、先月行われた「Future Sync vol.3」でのクリスさんのセッション
「いつデザインは社会的責任を緩めましたか?」
についてのディスカッションでした。

45分のセッションでは話しきれなかった部分を交えながら、皆で議論を行いたいというクリスさんの提案で実現。
冒頭はクリスさんのセッション再現から始まりました。


「いつデザインは社会的責任を緩めましたか?」


セッションで使ったスライドは以下に公開していただきました。
http://www.slideshare.net/WatanabeCarcass/ss-23312058
内容を知りたい方はぜひご覧ください。


Togettherによる当日のまとめ


金内さんによる当日のまとめは以下です。
http://togetter.com/li/522403
要点がよくまとめられています。



「デザイン」を体系的には勉強していない者からの視点


私の職業はプログラマーですので、デザインについてはちょっとフォトショでパーツを作れたりhtml+cssで見た目がちょっとキレイなサイトを作れるぐらいです。
その程度のスペックの視点での感想ですが、その「デザイン≒見た目キレイ」のような認識は改めたほうがいいと思いました。
これは、クリスさんも冒頭で言ってましたが、一般的に「design」というと以下のようなイメージではないでしょうか。
https://www.google.co.jp/search?q=design&hs=6Ev&hl=ja&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=K0_GUdXPJMP3kAW6iID4Bg&ved=0CAkQ_AUoAQ
感覚的に、美しい、とか、キレイ、とか、カッコイイ、など、「インターフェイスの問題を解決してくれる」というイメージですね。もちろんその側面もありますが、どうも、私を含め結構な数の人はそれを強く持っていると思います。

そもそも「デザインは何ですか?」というのがクリスさんの問題提起です。
そこから掘り下げ、「デザインはどんな専門ですか?」→「社会的な専門です」と主張されています。
「社会的な専門」と言われてもピンと来ないのが正直なところですが、話を聞くうちに何となくは掴めたかなと思います。

第一次世界大戦後に設立されたバウハウスという、美術と建築に関する総合的な教育を行った学校は社会的な失敗なんだそうです。
バウハウスがデザインしたものはかっこいいかもしれない、しかし、人間のことを研究しないで考えられたデザインだと。


これってどういうことかなーと考えたとき、ユーザー体験を軽視しているデザインなのかなと思いました。
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例に出された二つの「やかん」(と言っていいか悩みますが)の写真ですが、左がバウハウス、右が当時ではスタンダードな製品。
長年使用されステレオタイプな右のやかんに対して、見た目のインパクトがあって思わず手に取りたくなる左のやかん。勢いで買ってしまうかもしれません。
でも、あくまで想像ですが、取手が持ちにくそうですね。どうやって持つんでしょうか。面積が大きく保管場所も取りそうです。
使う人の身になって考えてみればわかることを反映させれば、つまりは、使う人のニーズがわかっていればとてもいいデザインになったのかもしれません。


自分の意識が追いついていない


私は、「見た目がいい」を先に考える傾向がありますが、今回の勉強会も含めUXの勉強を行っていると、それじゃあ上手くいかなさそうだなという感覚に陥ります。
いいサービスや製品を作るためにはどうすればいいか。
残念ながら「こうやればいい」と自分の口で上手く説明できずにいます。

ただ、エスノグラフィやフィールドワークのワークショップを行っていただき、その切り口のヒントをずっと頂いています。
何だか、点と点が線になりそう、そんな状態です。あとちょっとでわかるような。

浅野先生もクリスさんも、アプローチは違えど目標は同じなのかなと思います。いい製品やサービスを作るという目標。
お二方の考えを自分のモノにできれば最強だなと勝手に思っております。




今回の参加者の皆様


今回は9名でした。うち新規の方は2名です。ご参加ありがとうございました!



クリスさんに興味をもたれた方


Facebookアカウントはこちらです。
https://www.facebook.com/watanabe.carcass
ぜひコンタクトしてください。




メモ:
デザイン概論
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%A6%82%E8%AB%96-%E9%A3%AF%E5%B2%A1-%E6%AD%A3%E9%BA%BB/dp/4804802126

パシフィックリム

ロットリング

IKEAのマニュアルには字がない

UX Fukuoka vol.9 まとめ

5月12日(日)に、UX Fukuoka vol.9を開催しました。
そのまとめと気づきです。
http://www.zusaar.com/event/670004


勉強会の構成


今回は、恐らく福岡では初めての丸一日かけてのワークショップでした。
初めの1時間が講義で、残りは全てフィールドワークなりグループ作業といったワークショップです。
かなりハードですが、その分得るものは大きかったと思います。


講師の浅野先生


昨年12月のワークショップに続き、講師を務めていただきました。
前日のFutureSync vol.3から連続登板というバイタリティー溢れる方です。
「UXの伝道師」と紹介させていただきました(^^)


勉強会のゴール


自分の目的としては、サービスを提供する上でユーザーのニーズを汲み取り、それを解決するヒントなり方法なりを得たいという思いがありました。
参加者の皆さんも、遠からずそのような思いだったのではないでしょうか。


講義


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冒頭はUXに関する、とくにエスノグラフィについての講義でした。
ユーザーは、インタビューやアンケートでは「嘘をつく」可能性がある、と。
行動フローに基づかないと分からない事が多く、本質を探るには観察は有効だとおっしゃってました。
そして、カスタマージャーニーマップという、ユーザーの行動フローや心情を可視化する手段を説明いただきました。
その後、実際に行うフィールドワークの説明があり、11時から4グループに分かれ福岡の街に散らばって行きました。


フィールドワークスタート


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テーマは
「東京からの観光客に"裏福岡"を案内する」
というもの。
案内者(1名)・観光客(リードユーザー、2名)という役割を決め演じてもらい、残りの人はそれを観察します。
案内者と観光客は役になりきり最初に決めた設定で街を観光する、そして、観察者は時折被験者に質問したり、行動をチェックし書き留めて行く、という流れです。
演者はいかに自然に振る舞うか、また、観光客役の人には思ったことを口に出す行動発話法をやってもらう、など、上手く行うためのポイントが数々あります。
自分が同行したグループは、案内した店が閉まっているというハプニングがありましたが、そういったエラーもユーザーの本質が表れる重要なポイントです。

3時間かけてフィールドワークを行いました。


カスタマージャーニーマップ作成


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戻ってきたら、作成のポイントを教えていただき、カスタマージャーニーマップの作成を開始しました。
「電車に乗った」「食事をした」などの明確な出来事、タッチポイントを洗い出し、ユーザーの行動一つ一つをポストイットに書き出して貼っていきます。
ポストイットは、思考が具現化され、さらに自由に移動もできる便利な道具です。
さらに、行動や心情をもとに心理曲線を描き、それぞれの問題点に対する改善点を考えます。


各チームの発表


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3時間かけて作成が終わったら発表です。
今回は、12月のワークショップに参加していただいた方が各チームに入るようにしたので、あまり戸惑う事無くできていたように感じます。


参加者によるフィードバック


講師:浅野先生
http://asanoken.jugem.jp/?eid=2642
http://asanoken.jugem.jp/?eid=2644

花田さん
http://nobkz.hatenadiary.jp/entry/2013/05/13/015531

togetter
http://togetter.com/li/501912

その他、facebookのグループにフィードバックしてくださった方も多数います。
ありがとうございました!


自分の感想


と、駆け足で振り返ってきましたが、気付いた点が2つあります。


福岡でも有料勉強会をやれないことはない(のかな)


今回の勉強会の参加費4000円は、福岡では割と高額の分類だと思います。
無料の勉強会がスタンダードな福岡で、いくらUXが注目を集めてるといえ人が集まるかかなり不安でしたが、蓋を開けてみたら予想を超えた人数でした。
浅野先生の知名度やUXへの関心の高さがうかがえますが、福岡でも有料でやれるんだなと、ある種の測定ができた勉強会でした。
ただ、先生も「量と料金はあまり関係がない」とおっしゃってましたし、その辺の感覚はまだまだ掴めていません。


勉強会を行うこと自体、UXの勉強になっている


勉強会も一つのサービスと考えると、自分は図らずもUXを考えており、いかにいいUXを参加者に与えるかに注力していました。
まだ、顧客満足度は高くないと思いますが、勉強会を行うこと=UXの勉強と気付いたとき、究極の勉強法を実践しているのではないかと、我ながら思いました。すみません、この下りはあまりいらなかったです。



さいごに


参加者の分布を見ると、プログラマーや営業、ディレクターにデザイナー、学生さんなど、幅広い職種の方に来ていただきました。UXを考える人にもはや垣根はなく、誰しもが考えるべき時代になってきたのかなと思います。
九州の地では、中央に比べてUXの勉強がしにくいですが、少しでも興味を持たれたかたは、次回以降も参加いただければと思います。



浅野先生、参加者のみなさま、ありがとうございました。

UX Fukuoka vol.8

日常のUXに関する気づき

▶日々思っている改善してほしいこと
◎カラオケのお店にて。部屋を出てトイレに行ったあと、自室がわからなくなる。
→すぐわかるような工夫はないか?
 自分の部屋Noは覚えていないことが多い
  →これがホテルなら別
 (靴からスリッパに履き替えるとして)スリッパに部屋Noが書いてあれば良い
◎TV番組にて。マジシャンによるマジック披露。マジシャンの衣装に対して、道具がチープ。興ざめ。
→マジシャンは高級和服。演出問題。
 リハでは普通の服を着ていたのかも。
◎ETC。八木山バイパスのシステムはある意味画期的。
→自動通過ではない。ゲートの端末にETCカードをスキャンさせる仕組み。
 「ETC対応」ではあるけども。。。
 結果、渋滞発生していた。
◎店の看板と店内の雰囲気のミスマッチ
→店のロゴから受け取れたソフト印象に対し、店内はコンクリ打ちっぱなし、ハードな印象。
真珠の耳飾りの少女の某パンCMが意味不明
→コンセプトがわからない
◎バス停。歩道に人がたむろし、通行の妨げになる。
→白線を使って領域を明示的に表す
  それでも並ばない
Xboxの初期設定が面倒
→面倒だと思う順番は、Xbox→PS3→Wii,DS
◎某回転寿司チェーンの近隣店舗混雑情報
→近隣でも数十キロ離れているので、あまり参考にならない
 むしろ、教えられても、、、


▶日々思っている良い体験
◎酪農。牛の餌を置く床をコンクリからステンレスに変えたことで、掃除がラクになった。
◎タイムカードシステム。「部署」→「名前」という順序で自分の名前を選択していたシステムを、「部署」を省いただけで操作性が向上。
→従業員の数が少ないために、絞り込み条件が多いと逆に煩雑に感じる。
◎(システムの)検索結果画面。「一覧」→「詳細」というフローの場合、結果が1件ならば「一覧」を省略することで操作性向上。
→「機能中心主義」なら画一的な動きが第一。例外はなるべく認めない。
 「ユーザー中心主義」なら操作性が第一。条件に合わせて機能をカスタマイズ。
◎ドミノピザの外国人向け注文サイトは使い易い!
→キャンペーン云々などの無駄なノイズもなく、純粋に注文ができる。


▶DesignPoliceについて
モノやサービスを使う側の人が、デザインで困ったこと間違っていると思っていることを指摘できる仕組み。
町中にあるモノに対して、誤りを見つけたら専用のシールを貼る。
ポリスはそれを見つけて、何が問題あるのかを調査。
調査結果をモノやサービスの提供者に、根拠のある情報として提供。改善を期待する。
さすがにシールを貼るのは無理があるので、そのようなサイトを作っても面白いかも。


▶ペルソナについて
ペルソナは、デザイナーとクライアントとの強力なコミュニケーションツールという考え


▶高級ホテルのBarのサービス
お客の観察力は超一流
空気を読み、最高のおもてなしを提供している
ぜひお話を聞けたら

UX Fukuoka vol.7

前回ブログの続き
今回のテーマは
 「受付時のお金や配布物受け渡しの最適化」
です。

会場は北九州で、MIKAGE1881というスモールオフィス・コワーキングスペースをお借りして開催しました。
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WS開始


この日は18名の皆様にご参加いただきました。うち学生さんが1/3を占め、関心の高さをうかがえました。
一通りの流れを説明し、3チームに分かれてまずは行動観察からスタートです。
うちの班は、学生さん3名に受付のやりとりを演じていただきました。
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今回も多くの方にご参加いただきました


受付ロールプレイング


予め決めておいた受け付けの台本は以下の通りです。
1、何からのイベントにやってきたという設定
2、被験者は受付に招待状を渡す
3、受付は招待状を受け取り、名前を聞く
4、被験者は名前を告げる
5、受付は一覧表から名前を探す(10秒待つ)
6、受付は名前を見つける
7、受付は会費3,800円を請求する
8、被験者は五千円札を渡す
9、被験者は受け取り、おつりとしてまず、千円札を渡す。次に小銭と領収書を同時に渡す
10、続けて、被験者に名札と大きさの違う3種類の配布物を矢継ぎ早に渡す

もちろん、なるべく自然に近くするため台本の内容は被験者には伝えず行いました。
それでもやはり、演者はどこかぎこちなかったですw
ロールプレイングの模様は2台のスマホで撮影しました。


映像をもとに振り返り


撮影した映像をもとに、行動の振り返りと確認です。
・受付を待っている間、なぜ受付名簿を覗き込んでいたのか
・五千円札を渡すときなぜ「すみませんが」と言うのか
・小銭と領収書を同時に渡された時にどう思ったか
など、行動に現れていたことから、内面の心理に関することまで根掘り葉掘りの確認です。
これを3セット繰り返しました。


行動の要素化


3人分の行動結果が出ました。これらを分かりやすく整理するために、行動内容の要素化を行いました。
付箋紙一枚に対し、一つの要素を書き出していきます。
複雑な行動内容も分解することで、問題点が浮き彫りになってきます。
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問題点と改善点の抽出


要素化した内容を基に、問題点や改善点を考えていきます。

しかし、この作業が難しかった。
今回の受付は、あえて背景や状況設定をしていなかったので、何をもって問題とするのかが曖昧になりました。
例えば、
 10秒待たされた
という内容も、人によっては早いし遅い。
要素に対しての判断基準がなかったのです。
まずは、その設定から行う必要がありました。ストーリーやペルソナを決めていないので、「仮定のうえの仮定」という状況になりそうな気配でした。


主観的に抽出


判断基準がない以上、自分たちの主観で問題点と改善点を決めていきました。
・10秒待たされること
・小銭と領収書は一緒に渡すこと
・配布物が多い
などの問題が挙げられました。
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改善ストーリーの決定


問題点が出たあとは、いよいよ改善に向けての考察です。
改善にあたってストーリーを考えました。今回は学生さんが多かったのもあって、
「色々な年齢層が参加する大規模な同窓会」
というイベントと設定しました。
そして、ペルソナの設定です。
「御影令夏さん 20歳 令嬢系女子学生 久しぶりの同窓会で楽しみにしていた」
というなるべく具体的なペルソナを設定しました。

そして、どの問題点を改善するかですが、演じた3人が共通して不快感をもった
・受付が長過ぎる
にフォーカスを当て、「待たせることのデザイン」について改善案を考えることにしました。



ストーリーの有無で改善案の内容に差が出る


もし単に受付が長過ぎるという問題を解決しようとするなら、

受付が長い → 少しでも短くする → 効率化を考える → 自動受付システムのようなプログラムを作る

という改善に向かうかもしれません。プログラマーの方なら特にそうかも。

ところが、ストーリーが決まっている分、発想も柔軟になりました。

受付が長い → 受付を長いと感じさせないようにする → 受付時に気がまぎれる何かを与える

という考えに至り、そこからストーリーを勘案し、

受付を"恩師"にしてもらう → 被験者は恩師に久しぶりに会え感動する → その間に受付を済ませ、待っているという感情を抱かせない。また、受付のテーブルに出席者一覧リストを配置しておきそれを読む事で、いっそう待っている感を失わせる

という改善案を考えました。



発表は迫真の演技で


全ての班が考えまとまったところでいよいよ発表です。
発表の方法は特に決めてませんでしたが、いかに分かりやすく使えるかが重要です。
イラストを使ってストーリの説明をする方法もありますが、うちの班は、一番イメージ抱かせやすいと思い、「演技」による発表を行う事にしました。
いわいる「アクティングアウト」ですね。

発表者と演者は学生さん3人。
一人が発表と全体説明を行い、二人が演技です。
女子の方が「御影令夏」さんとなって受付にやってきて、恩師役の男子の方が受付を行います。
おおよその台本は考えましたが、あとのアドリブはおまかせでした。

そしてこれがとてもいい演技!
わざとらしくなく、見事に「令嬢」と「恩師」を演じてました。
見ている人にも、よーーく伝わったのではないでしょうか。
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課題の残るWS


講師のいない、自分たちだけのWSでしたが、課題も多く残りました。

★行動観察自体が「演技」だったため、「本物」のユーザー行動や心理を汲み取れない
 1人目は台本を知らないので自然に近い動きになったかもしれませんが、2人目3人目は台本がわかってしまったので、普段とは違う行動になったかもしれません。
実はうちの班の3人目の演技の際、領収書を渡さなかったので演技を止めて最初から行いましたが、そういうハプニングはユーザーの「素」を発生させやすいので、そのまま演技を続ければよかったです。

★基準がない
記事の途中にも書きましたが、今回の受付には明確な背景やストーリーを儲けませんでした。
これは、こちらからガチガチにテーマを与えるのではなく、ある程度の自由を持たせた形で与えたかったためです。
それが逆に悩むポイントを増やしてしまったかもしれません。

★テーマに合った手法を用いてない
前回講師を務めていただいた浅野先生から
「コピーは学びの質がよくない」
ということを伺ってましたが、まさにそうだと実感しました。
なるべく今回のテーマに沿った手法を取り入れようと画策しましたが、やはり一度やったことがある手法が知見もあるためそれを採択した部分もあります。
それが今回のテーマに即していたかと思うと疑問符です。
調査に映像録画を用いたのはよかったと思います。あとは、評価手法についてもっと相応しいものを取り入れた方がよかったと思います。




さいごに


課題の多いWSでしたが、「モノよりコトから製品をつくることでよいUXが生まれる」ということを実感した会でした。
また次回以降、いろいろな手法を試して行きたいと思います。

今回のWSでは、浅野先生にアドバイス賜りましてありがとうございました。

UX Fukuoka vol.7 事前準備

ちょっと前の話になりますが、UX Fukuoka vol.7を開催しました。
今回は、オブザベーションワークショップをやってみよう!というテーマで、前回講師をお招きして行ったワークショップを我々だけで手探りでやってみました。


事前に主催たちだけでシミュレーション


前回とはテーマを変え、
 「受付時のお金や配布物受け渡しの最適化」
を目標とし計画を立てました。

観察の手法、HCDプロセスでいう「利用の状況の把握」の方法はいろいろあります。今回は、
・行動発話法
・写真による回顧法
・映像による回顧法
のいずれかで行うべく、実際に受付のロールプレイングを行い検討しました。
その結果、
・行動発話法
 →行動時間が短すぎて発話する機会が少ない、また、記録者の記録が追いつかない。
・写真
 →ポイントとなりそうな行動の間隔が短くて、連写になりがち。
と判断し、
「行動を映像で残し、あとで映像を見ながら被験者に確認していく」
という方法で観察することに決めました。
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